|  しかし、それにしても、電車は空いている。乗っているのは一両につき二〜三人。車両はフランス製らしく、内装も外装もおしゃれ度は高い。振動も少なく、渋滞を覚悟しなければならないクルマよりはよっぽど快適だし、冷房もよく効いているし、それに速い。どうして人気がないんだろう。運賃が高いのかなー。トゥクトゥクやタクシーで町を走った感覚で地図を見ると、ナナはずいぶん遠くに感じたけれど、スカイトレインだとあっと言う間に着いてしまう。そして、高架駅をおりようと階段に一歩足を踏み出したとたん、なんとそこには今までとは別の世界!。渋滞で騒々しいクルマのエンジン音、でたらめに交じり合った音楽は雑音と化し、屋台を行き交う人の声も増幅されてざわめきに変わる。静かだった電車の中とは大違い。ここはやっぱり600万人の大都会だ。階段の途中の目線と同じ高さにインド料理屋のケバいネオン、その隣がイタメシ屋。大通り(スクムウイット通り)の両側にはショッピングセンターやオフィスビルが立ち並び、その前の歩道には、廃棄ガスで薄汚れたテントを張った屋台の列。車道にはぎっしりと詰まった乗用車(その90%くらいは日本車)。階段を降り切って歩道を少し歩いただけで「やっぱりアジア」を身を持って感じた。
 地元の人や白人の観光客がぞろぞろと歩いている流れに乗って、我々も歩道を歩いて見た。歩道沿いにオープン形式のカウンターだけのバーがビッシリと並んでいる。ほとんどがドアも仕切も無く、歩道と店の区切りが無い。内部は店内全部がカウンターで、カウンターの中にはやたらと現地系の女の子(おばさんも時々混じっているが)が多い。お客の入りはまばらで、白人の観光客が三〜四人、外を見ながら缶のカールスバーグを飲んでいる。きょろきょろと中を覗いていると、目があったおねえさんから「ニッ」と微笑みかけられた。「微笑みの国タイランドがさっそくお出ましだ」と身構えると、「シャチョー、ビール。シャチョー、ビールイッパイ。」とすかさずお声がかかる。声の主は期待に答えて、チャーミングなタイのお嬢さん・・ではなくて、昔はチャーミングだったかも知れない、年のころなら35歳くらいのどこか場慣れした雰囲気を漂わせている若いおばさんだった。
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 1.初めてのバンコク
 2.シーフードレストラン
 3.ナナ駅界隈
 4.大都会バンコクの怖〜いお話
 5.チャオプラヤ川とお寺
 6.日本人居住区
 7.パッポン・タニヤ
 8.朝市
 9.ホテルの朝食
 10.メランコリック・パタヤ
 11.別荘キット
 12.空港とタバコ
 13.暗くなって到着プーケット空港
 14.カタビーチのホテル
 15.パトンの夜はやっぱり怪しい
 16.コンシェルジュ
 17.ビーチ
 18.真昼のプーケット
 19.カタビーチ商店街
 20.プーケットファンタシー
 21.プーケット最後の一日
 
 
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